ブラジル柔道チームに日本人女性コーチがいる。藤井裕子さん(35)。2013年からリオデジャネイロに住み、新婚生活、出産、育児を経験しながら指導を続ています。
2012年ロンドン五輪では英国柔道チームのコーチだった。そもそも中学時は全国2位、高校時も同3位の実力者。
しかし、広島大卒業後「子どもの頃から漠然と海外の人と話したいと感じていた」と2007年に、英国に留学したことが“波瀾(はらん)万丈”に身を置くきっかけだった。
東京五輪まで1年。感動のオリンピック逆転金メダル秘話をお届けする。スラム街出身のためにひどい差別を受けたブラジル女子柔道、ハファエラ・シルバ選手。
彼女をメダルへと導く重要な役割を託されたのが、日本人コーチの藤井裕子さん。藤井さんは妊娠しても熱血マンツーマン指導を続け、やがて国境を越えた固い絆が育まれていく。
リオ五輪決勝の舞台、ハファエラ選手は藤井さんが授けた逆転の秘策で、見事最強のライバルを倒す。
藤井裕子(ふじい・ゆうこ)の経歴
1982年(昭57)8月18日、愛知県大府市生まれ。10年5月から英国チームで指導し、ロンドン五輪では、女子78キロ級のジェマ・ギボンズが銀メダルに輝き、同国柔道界の12年ぶりのメダルに貢献した。
ブラジルに渡ったのは2013年。初めはポルトガル語を全く話せなかった。今では携帯電話の対話アプリで選手とやり取りできるほどに上達している。
愛知県大府市の出身で、5歳のころに柔道を始めた。中学、高校と全国大会で活躍したが、大学では日本代表には縁がなかった。24歳で引退を決め、英語を学ぶため07年にイギリスへ留学。そこで指導者の道が開く。
初めはアルバイトがてら、留学した大学の柔道部で教えていた。やがて熱心に指導する姿が英国代表チームの目に留まり、コーチに就任。自国開催となったロンドン五輪で、12年ぶりのメダル獲得に貢献した。
「今のブラジルに足りない物を教えてほしい」。ブラジル代表チームの関係者から声を掛けられたのは、ロンドン五輪前に各国の選手が集まったテスト大会でのことだ。
日本人移民が普及に深く関わり、ブラジル社会では柔道が浸透。競技人口は世界最多の200万人とされる。だが裾野が広がるに連れ、当時の代表チームは「基本がおろそかになっている」と危機感を抱いていた。
じっと座視するでも激高するでもない。選手と対話を重ね、最良の選択肢を探るスタイルは国が変わっても信頼を集めていた。
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